パイプが、鳴り響くのです


オルガンの生徒たちにとって、試験で大変な季節がやってきました。

昨日のランディドルグコンサートでもブリュッセル王立音楽院の生徒さんが演奏し、私はアシスタントをしました。

学生さんは先生とのレッスンが定期的にあるし、仲間間で切磋琢磨しつつ練習をたくさんしているので、凄いなあ頑張っているなあと、どの生徒さんでも感心するしそのパワーだけでもぐっと心に訴えかけてくるものがあります。

昨日の生徒さんについて書いているのではないのですが、しかしながら、頑張って演奏している場合になにかが欠けているとしたら、それは「頑張って演奏している」ことばかり目立って、オルガンがのびのび鳴っていないという部分でしょうか。

自分も若い頃そうでしたが、知らず識らずのうちに、自分の思いっきりの「体力(体重)」をオルガンに「体当たりして」演奏しがちになるため、子音の出し方が同じきつさというか、手のひらの重量がオルガンに必要な重さをはるかに凌駕していて、さいごまでオルガンが「鳴り響かないまま」へとへとになってしまう。途中で音が鳴りっぱなしになるアクシデントも起きます(内側のしくみがひっかかってしまう)。

鳴り響くためには、響くための「音のリリースの仕方」とそのための時間が必要です。でも子音を重く深く入れているとリリースに使える時間が減ってしまうので、結局オルガンのパイプを吹きっぱなしのまま次の音に移ることになり、バッハの大きな前奏曲とフーガの場合など、書いてあるすべての音でそういう演奏になってしまったら、音楽が流れ出る余裕がありません。

両手両足を使った五声部のフーガですべての音を弾きこなす、ということじたいが難しいのはもちろん事実なので、なかなかオルガンの一つ一つのパイプの気持ちに寄り添うことができない。

でもこれがオルガンではなく、教会の塔に設置されているカリヨンだとしたら、ひとつの大きなベルが揺れて、響いて、もとの位置に戻る、という動きの連鎖でひとつひとつの音が弾けるのだということを、脳が認知しながらしか、音楽を作ることはできません。

オルガンの場合、外に鳴り響くカリヨンよりは音響も限られていますが、教会堂は練習室の何倍もの音響です。一本のパイプもひとつの鐘よりは小さいけれども、オーケストラの金管楽器に比べたら何倍という長さのパイプも多いのです。

ということは、たとえば耳慣れたピアノやヴァイオリンの作品の「速さ」でオルガン曲を演奏したい場合、ひとつひとつの音にタッチする速さとその手のひらの重さ、その音をリリースするときの手つきというか速さと重さ、そしてその動きの連鎖を、そのフレーズの中でどこが天頂にあたるのかも考えて、練習しておかなければなりません。

実際的には、「頭で」音を弾く前に聴き、「耳で」音を弾きながら聴く、というふたつのことをほぼ同時に行いつつ弾く、そこがオルガンは難しいのです。

(なぜならば今鳴っている音の次の音を、頭の中では鳴らすことになるから)

そのように演奏しようといつも心がけていたから、5月のランディドルグの私の当番のときには、教会堂のなかが、私の脳のなかにあるような錯覚がありました。広い場所なのに脳のなかにはこんな場所があったんだなというような、真っ白な画用紙のような光に満ちた世界。

その演奏を偶然聴いていた日本人ヴァイオリニストの人と、友達になり、あとで自宅に来て娘の楽器を試演したときに、その人は鐘みたいな音を出しました。うちで聴きなれたヴァイオリンなのに、聴いたこともないとんでもない重低音が響き出したので、娘と口をあんぐりさせてびっくりしてしまいました。

初めて会った、それも楽器の畑の違うひとが、オルガンというものの本質を見抜いてくれた気がして、この記事を書きたいと思ったのでした!

若いパガニーニ君どうもありがとう!

(さてこの方はどなたでしょうか?この次のブログで答えを書きますね)

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