音なし

年配のオルガンの生徒さんが、

「耳の調子が悪い」と言う。


耳が不調に陥ると、

鳴っていない音が聞こえたり

鳴った音が聞こえなかったり

様々なケースがあって

苦労は果てしない。


もちろん外からは見えないので、

レッスンするとき

生徒さんの気持ちを

汲み取りつつ教えるのが

かなり難しい。


今回は、耳が「過労」らしかったので、

そういう時はオルガンの一番

小さい音色にして「箱を閉めて」

(レシ箱という三段目の鍵盤の、

ブラインドのように開け閉めできる

正面の「窓」を閉めるとパイプの

音が篭って、遠くに聞こえる)

すごく弱音にして練習するか、

思い切ってモーターを切って

無音で練習すると、

めちゃくちゃ静かで良い、

と勧めると、

「おお、やってみたい」

と言うので、音なしで

レッスンをしてみた。


知っている曲なので、

音が出てなくてもちゃんと

音が「聴こえる」し

手と足を見ていれば

間違いもわかる。


どちらにしても、

生徒さんが音を間違える時は、

音が出る一瞬前に、

違う音を触る

いうことが先生には

わかるので、

音が出ていなくても、

実は大差がなかった。


「「テノール声部の音が1つ、違っていること、

それからソプラノ声部が四分音符で次が休符、

というときに、同時にバス声部は二分音符

だから右手の小指だけ先にリリースしましょう」

と教えて、その小節を3回練習してもらうと、

3回目にはちゃんと「弾けるようになった」。


音楽のレッスンなのに、

音が全く出ていないのに、

私たちはどちらも特に

困っていなかったことが、

実に、渋い体験だった。


さらに、曲が、スウェーリンクの

「私の若い日々は過ぎ去った」

だったとは。

出来すぎたおはなし。

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